ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。
その名前にどれほどの重みと歴史が刻まれているか、音楽ファンなら誰もが知るでしょう。
そして、佐渡裕。
日本を代表する指揮者として世界的に活躍する彼の名は、今やクラシック音楽界においてなくてはならない存在となっています。
このDVDに収められているのは、巨匠が奏でるショスタコーヴィチの交響曲第5番。
この組み合わせだけでも、音楽ファンにとっては垂涎の的ですが、実際に映像を見てみると、その感動は想像をはるかに超えるものでした。
ベルリン・フィルの深淵な音楽世界
ベルリン・フィルの演奏は、一言で言うと「深淵」。
それぞれの楽器が奏でる音は、単なる音ではなく、まるで生きているかのような生命力に満ちています。
弦楽器の艶やかな響き、木管楽器の色彩豊かな表現、金管楽器の力強さ、そして打楽器の緻密なリズム。
これらが一つになって、聴く者をショスタコーヴィチの世界へと深く引き込んでいきます。
特に、第3楽章の美しさは言葉では言い表せないほど。悲しみと希望が入り混じったメロディーが、聴く者の心を揺さぶり、いつまでも心に残り続けることでしょう。
佐渡裕の情熱と繊細さ
佐渡裕の指揮は、情熱と繊細さを兼ね備えています。
彼の指揮棒一つ一つに、ショスタコーヴィチの音楽に対する深い理解と、それを聴衆に伝えるための強い意志が感じられます。
ベルリン・フィルという巨艦を、見事に自分のものとして操る佐渡裕の姿は、まさに圧巻。
オーケストラの一人ひとりが、佐渡裕の音楽に対する情熱に応え、最高の演奏を繰り広げています。
何度見ても飽きない、感動の演奏
このDVDを初めて見たとき、私はただただ感動し、しばらくの間、その余韻に浸っていました。
そして、何度見ても、新しい発見があり、感動が深まっていくのです。
ショスタコーヴィチの音楽は、聴く人によって様々な解釈が生まれる奥深い作品ですが、佐渡裕とベルリン・フィルが奏でるこの演奏は、まさに「本物」と言えるでしょう。
佐渡裕 指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のDVD
指揮者で音は変わる
佐渡さんの指揮はいつ見ても楽しげで、表現にあふれていて、素晴らしい。
世界的なベルリン・フィルハーモニー管弦楽団なら、だれが指揮を振っても、良い演奏が聞ける・・・と思う方も多いでしょう。
いえいえ。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団だからこそ、違うのです。
ベルリン・フィルの新たな輝きを導く、樫本大進の卓越した演奏
DVDをみて、佐渡さん以外に もう一人気になる人物がいました。
第1コンサートマスターの樫本大進さんです。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 第1コンサートマスター/樫本大進
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、その名声は世界中で知られています。そして、そのサウンドを支える一人として、第1コンサートマスターの樫本大進氏の存在は欠かせません。
樫本氏の卓越した演奏は、ベルリン・フィルの音楽をさらに深淵で豊かなものへと昇華させています。
彼の奏でる音は、単に音符を奏でるだけでなく、音楽の物語を語り、聴く者の心を揺さぶります。
樫本氏の演奏の特徴の一つは、その細やかさです。彼は、単に音を出すだけでなく、音色、強弱、ニュアンスなど、あらゆる要素を緻密にコントロールすることで、音楽に深みと奥行きを与えます。
樫本氏の加入以降、ベルリン・フィルの演奏は、さらに洗練され、深みを増したように感じられます。彼の存在は、まさにベルリン・フィルの新たな輝きを導くものと言えるでしょう。
彼の演奏されるとき、誰よりも体を動かして演奏されています。
それは、とても大切な意味があったのです。
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の中でお話をされていました。
曲の転調で体を沈ませたり、指の動きを後方の団員に見せてこれから弾く音の音色や伸びのニュアンスを伝えるなど、さまざまなサインを送り続けている。
彼のインタビュー記事も見逃せないので、貼っておきます。
http://www.newsdigest.de/newsde/features/6093-daishin-kashimoto-interveiw.html
演奏が終わる前から、佐渡さんは「涙が止まらなかった」とお話をされていました。
樫本大進も、画面からでも目が潤んでい居るのが分かりました。
音楽とは鎮魂であり救済である
ベルリンフィルを指揮する直前の佐渡さんが、コメントされていました。
「大震災後、音楽家として何ができるのか悩みました。が、とにかく自分ができる仕事を全力でやり遂げようと……。その結果、被災された皆さんが、少しでも元気になられるような演奏ができればうれしい……」
音楽とは本質的に、鎮魂であり救済でもある。
とても,心に染み入る言葉です。
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